勝手に迷子事件


3歳の時に札幌に渡り、お友達が早く出来るようにと
三年保育の遠くの幼稚園に入った
スクールバスで国道を一直線 かなり遠かった

ある日のこと
トイレを済ませてバスに乗ろうとしたら既にバスはいなかった
園長先生が一緒に砂場で遊んでくれた
そのうち幼稚園前の獣医さんの所で犬を見に行きたくなり
「先生またね さようなら」
「気をつけて帰りなさいよ」


いつもの所で私を待っていた母は
乗っていないので驚いた。
先生も「気がつかなかった」と・・・
気がつかれないほど影の薄い子供だったのだろうか
すぐ迎えに行きますと将軍に連絡している頃・・・

獣医さん家は同級生のBFの家だった。
「ワンチャン見せて」と勝手に押しかけて
おやつまで頂いて動物を見ていた

幼稚園に到着した将軍と母は私がいないのに愕然とした
園長先生は近所の生徒だと思っていたらしい
先生も真っ青 近くを探してもいない
もう一度自宅に戻りしばらく様子を見ることに
今では考えられないのんびりとした時代だ

薄暗くなってきたので帰るとBFに別れを告げて
国道一直線の道をテクテク歩いた。
途中には猫ちゃんがいたり、おもしろい石を見つけたり
本人は結構探検気分だったのだろう
しかし子供の足
バスでも20分以上の道のり 歩けば1時間以上はかかるだろう
しかもだんだん暗くなってきていささかまずいと思った

その頃、両親は必死になって私を捜していた
近所の人も 幼稚園の先生も
もう真っ暗になり「捜索願」を警察に依頼するまでに話がなっていた
迷子になってるのよ・・・いや、もしかしたら
誘拐 きっとこの二文字が頭の中をぐるぐる回っていたに違いない


やっと自宅前に着いた私は疲れて斜め前の床屋さんに寄った
「おじちゃん、ジュース頂戴」
いつも散髪でピンクのリボンを付けてくれる床屋のおじちゃん
「何処で遊んできたの?お飯食べていくかい?」
そのおじさんは事情も知らず、捜索に呼ばれなかったようだ
そこで夕食をご馳走になり元気に
「ただいまーーーー」

玄関で警察官が事情聴取していた
そこへ主役のかとぺー 登場

何処行ってたんだ!!
「いやーーーよかったよかった」
ゴチーーン またゲンコツだ
悪いこと何もしてないのになんでゲンコツなんだ?
なんで隣のおじさんとおばさんがいるの?
おまわりさんがいるの?
全然事情は飲み込めなかったけれどとにかく眠たかった

「なんでバスに乗らなかったの!」

「おしっこしてたらバスいなかった」

「ンッ?」

「知らない人と一緒だったの?」

「ううん」

「誰かにお菓子食べに行こうって言われたか」

「うん お菓子いっぱい食べたよ」

「ほらーーやっぱり誰かに連れて
      行かれるところだったんだ」

「園長先生」

「え?!園長先生が」

「園長先生と遊んだの」

ホッ そうだねえーーそれからどこに行ったの」

「ワンチャン見たの お菓子も食べた」

「やっぱり!誰かについていったんだわ」

「かとぺーが行ったの」

「あんたがついて行ったのね!」

「知ってるもん」

「犯人は知ってる人なのか 誰なの!」

「幼稚園の前のたかしくん
ワンちゃんもネコちゃんも
みーんな檻に入ってたよ」

「ンッ?」


確かに寄り道はしたし、床屋さんでご馳走にもなった
だけど園長先生と遊べたし
いろんな動物も見れた 宝物の石も見つけた
こんな素敵な1日だったのに

それからお説教が続いたが
それからの行動を事細かに説明する間もなくその場で寝てしまったようだ


今なら責任問題やもっと大きな事件になっていたかもしれない
次の日 園長先生が挨拶に来た
「今度、先生にいっぱいワンチャン見せてあげるね」
園長先生の顔が引きつっていた