美  声

朝、職場まで40分、なるべく歩くようにしている。
乗りのいい音楽を聴きながら歩くと、歩調も軽やか
曲に合わせて頭の中で歌っている  と思っていた
口は確かにパクパク開く事はあるだろうけど・・・

人とすれ違う時は気をつけていたつもりだった
急いで階段を下っていくとふと自分が完全に声を出して
歌っているのが判り周りを見てしまった
大丈夫 誰もいない ホッ
 でもなにか・・・視線を感じる 冷たい視線

あたりを見渡すと 庭の木から顔を出して
唖然としながらこちらを見ているおじさんがいた
そういえば・・・昨日もあのおじさんは庭にいた
しまった・・・私の美声を聴かしてしまった
「美声だねえ」とか言ってくれれば「すんません」と言えるのに
それも言えないほどすごい美声だったのだろうか
演歌だったら反応してくれたのだろうか

おじさんは次の日は、又次の日の朝も
私に視線を合わせずに黙々とお庭の手入れをしていた
知ってるくせに・・・

私を傷つけない為に知らん顔をしてくれてるのか
見てはいけないものを見てしまって戸惑っているのか
優しい人なのか臆病な人なのか

謎である